日本のイノベーションをツブしているのは誰だ?

C|Netのブログより:
http://rblog-media.japan.cnet.com/0002/2007/02/post_deaf.html

 きょう 2/28 の日本経済新聞一面コラム「成長を考える」で、まさしく考えさせられる内容の記述があった。冒頭部分から少し引用してみることとする。

幻の「iPod

 米アップルが開発し、世界で大ヒットした携帯音楽プレーヤーの「iPod」。実は全く同じアイデアiPod に先駆けて考案した日本人がいる。
 三洋電機のオーディオ部門のトップだった黒崎正彦(65)がシリコンバレーを訪ねたのは 1997 年秋のことだ。アップル再建のために復帰したばかりのスティーブ・ジョブスに面会し、記憶媒体を内蔵する携帯音楽プレーヤーを使って、音楽コンテンツを配信するビジネス案を披露した。
 黒崎の狙いはブランド力に優れるアップルとの提携だった。ハリウッドに強いジョブスを巻き込めば楽曲を提供する大手音楽会社への影響力も期待できた。
 だが、構想はあっけなく頓挫する。「音楽?コンテンツ?あきまへん」「これからは情報システムでっせ」。黒崎は会長だった井植敏(75)からこう言われた。「なにわ版 iPod」構想はお蔵入りし、その後、復活したアップルと今も再建のメドが立たない三洋との差は余りにも激しい。

 黒崎氏の技術・経営の両面における慧眼ぶりには驚かされると共に、おそらく今抱いているであろう悔しさは想像して余りある。
 ちなみに、Google で黒崎氏の名前を検索してみたところ、残念ながら現在の動静を掴むことができなかった。

 だが、少なくとも井植氏をはじめとする経営者層がまったく無知・無関心だったかと言えば、それは誤りである。
 井植氏の当時の戦略じたいの是非はともかく、「情報システム」なる(おおよそそのくくりがロジカルでない)ものに対する少なからざる興味、あるいは脅威を感じていたことは想像に難くない。
 ただし、それ以降の勝敗は、そうしたロジカルでないものをいかにロジカルなものへと昇華させ、そしてそれに併せて現場からボトムアップで上がってくる有益なイノベーションを受容できたかどうかによって決まったと言える。

 そういったあたりからの知識獲得を怠るのみならず、抽象的・非論理的な表現を振り回して現場を困らせる経営者や管理職こそ、英語どうこう以前に産業界から早々に退場して欲しいと切に願うのだ。